連続講座「森とまちをつなぐ人」

asahiro2009-09-29


ふくおか森づくりネットワークからの連続講座のご案内です。

家づくりと森づくりを佐賀で取り組まれているNPO法人森林をつくろうの佐藤さん
楽しくスギ材の利用を提案する日本全国スギダラケ倶楽部の本部広報宣伝部長の千代田さん
カーボンオフセットのプロバイダーで坂本龍一氏が代表を務める「more trees」の事務局長の水谷さん
そして、熊本大学文学部の徳野先生をお招きし、お話を伺います。

なお、現地ツアーの講師は、故中司矢部村村長を予定しておりましたが、残念ながら、先日、急逝されてしまいました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

詳細は、「ふく森」のサイトをご覧ください。

人丸神社周辺の公園計画

asahiro2009-09-24

先日、S町の標記の公園に関するワークショップのコーディネイトを引き受け、第一回目を実施しました。

ここは住宅地に囲まれた里地・里山です。8年前にN先生と私はS町の第四次総合計画などのマスタープランづくりに全面協力し、私は環境保全機能評価を担当しました。当時、徹底したアンケートと市民参加型のワークショップが行われ、この近隣公園計画も同様に基本構想の絵まで作成していたのです。

ところが、8年の間にS町は実施設計を進め、住民に説明することもなく昨年度第一期工事を実施してしまいました。舗装園路を作り、それに沿って広葉樹林を一部伐採してしまったことについて、当時のワークショップに参加された方々は大いに怒り、S町に抗議をされました。私の役割は、そのもやいなおしです。

8年ぶりにS町を訪ねましたが、人々の間に募っている不信感をとても感じました。当時のアンケート結果では、自然豊かなまちが誇りであると、多くの住民が回答していました。この8年間、空港問題やJR新駅開発などもからみ、進められる開発行為について、住民はこんなはずではなかったという意見だと想定されます。マスタープランは一種の契約書であり、それを軽んじて事業を進めたS町は、住民の信頼、すなわち市民力という財産を大きく損ねてきたと考えます。

ピカピカの園路の周辺を歩くとその状況がよくわかります。雑木林には竹が侵入し林内も荒れ放題です。ため池の堤は草刈もされず。民家のそばの広場で、学生達は気を使うこともなくBBQを楽しんでいます。誰のための近隣公園なのでしょうか? 人も生き物もいなくなる公園事業など、良くある話なのかもしれません。緑地の保全と書かれた構想図の中身は、からっぽと言うほかありません。

ワークショップでは、意見出しをお願いするや否や、ほぼ全員が付箋紙への記載を拒まれました。自分達だけでこの場を進めるべきではないといわれるのです。なんと健全な考え方ではないでしょうか。S町の市民力の強さを改めて感じました。私は、8年前のワークショップの成果をレビューすることと、来られていない方々にニュースレターを配布し、同様の意見提出を求めていくことを事務局にお願いしました。町民は8歳の年齢を重ね、絶滅危惧種が最近発見され、新住民も増えました。当時の構想図は見直しが必要であり、この時間を大切にしていただきたいと説明し、参加された方々からは多くの意見を出していただくことができました。不信という壁を一緒に乗り越えることができ、今後、生き物環境と人の関わり方を併せて検討し、設計が進められると想定しています。

それにしても、開発という利権を優先し、市民との信頼を裏切り続けた行政は、クレームの嵐という結果を自ら招いたということを、もう少し認識していただきたいものです。

故山下弘文氏を訪ねて(日本湿地ネットワークシンポジウム)

asahiro2009-09-19


先日、JAWAN(日本湿地ネットワーク)のシンポジウムを聞きに家族で長崎県諌早市を訪ねました。演者は鹿児島大学の佐藤先生、お題は「故山下弘文氏と歩いた干潟」です。

先生のスライドの中に、私のM2の頃の姿の写真がありました。当時、エコロジカルプランニングの研究室に所属していた私は、なぜ、干潟が大切なのかを知りたくなり、諌早干拓事業に反対活動をされていた故山下氏を訪ねました。ちょうどそのころ、佐藤先生も諫早干潟の底生生物調査を開始された年であり、私達は一緒に、まだ堤防の閉め切り前の生きていた干潟を掘って歩いたのです。私がドロドロの干潟を掘ると、2cmぐらいの透明のピンク色をした生き物を見つけました。先生に「これはなんですか?」と聞くと、「お〜、これはわからん」という・・・具合に、干潟の大切さを、甚だ実感する2日間を過ごしました。

16年たって、今回先生に再度種名を尋ねましたが、おそらく新種であろうということでした。ゾクゾクと珍しい生き物が出てきていた諫早干潟。失われるのはあっという間でした。世間が自然に目を向けず、人知で全てを制御しようとした諌早干拓。後にゴールドマン賞を受賞された山下氏は、開門を見ることなく急遽旅立たれてしまいました。「負けて当然、勝てばおおごと」としゃべりながら、屈託のない笑顔で干潟を掘り、漁民と話し、行政資料を集め、日本湿地ネットワークで連帯を呼びかけた行動力は、魅力的であり、私が研究を始める原点となりました。潮受堤防の閉め切り前に師等と触れた干潟の感触は、忘れられない体験です。

シンポジウムのお題をニュースレターで発見し、思わず参加し、佐藤先生とも旧交を深めることができました。写真の干拓堤防を歩き、左右の干拓内と海の色の違いを見ながら、干潟の浄化機能、生物多様性はアマゾンより大切な身近な自然環境として、私達は認識すべきだと考えます。

フィールドワーク及びNPOとの連携

asahiro2009-09-09


先日、全学のFD(Faculty development)で講演を行いました。全体のテーマは「体験活動を通じた学習成果の達成」です。会の趣旨は、次のようなものです。

近年の大学教育において、学生の課題探求や問題解決等の能力を身につけ学習効果を高める教育方法の一つとして、学外での体験活動を取り入れた実践教育(サービス・ラーニング)が注目を集めている。それらは、大学で学んだ知をもとに実際の体験活動を通じて深め、生きた知識を獲得するという観点から、個々の教育課程における学習成果の効果的な達成のために有効な方法ととらえられている。
今回の全学FDは学内の取り組もを報告し、体験活動を通じた教育方法の展開について考察する。

さて、私達の芸術工学部環境設計学科は、もともと、九州芸術工科大学の草創の時代から、フィールドワーク、体験教育が、調査、設計、発表の中で取り入れられていました。フィールドでの見学、地域の人や専門家とのふれあい、調査による課題の発見、計画・設計活動、そして、プレゼンテーションです。

いち卒業生として、この流れの演習は当たり前のように受け入れ、現在も続けられています。ある面、これらの活動が、学生の満足度、大学院の充足率などに繋がっていると思われます。もちろん課題もあり、教員・学生の負担は相応に大きく、地域やNPOの受け入れ体制にも課題があります。

さて、全学FDで私は、「学生は講師に学び、自ら学ぶ。でも、共に学ぶ場づくりが実践教育の要である。」という観点から、学科教育と農山村での新入生合宿研修などの話をさせていただきました。また、他のお二方の先生からは、博士の企業インターン活動、教育ボランティアのお話がありました。後半のディスカッションでは、様々な観点が出され、下記に列記しておきます。

  • そもそも、研究者は教育者か? 教員の更なるFDが必要では。
  • 新しい手法の開発だけでなく、既存の教育資源の活用の重要性が再認識された。
  • 原因主体の認識の学習状況を作り出すことが手掛かりとなる。
  • 全学で体験学習を強化する組織が必要とされるのではないか。ボトムアップでは変われない。まずは、トップが現場の話を聞くことから始めねば。
  • まずは、養成人材像を明確にし、各ポリシーに含める必要がある。
  • 外で生き生きしてきた学生が、大学で元に戻ってしまった例もある。

などなどです。
個人的な感想として、実は、九大の中では、このような活動は、あまり取り入れられていなかった感があります。しかしながら、多くの先生から「実はうちでも・・・」という声があり、プログラムに導入されたい先生方がおられるようでした。体験教育は教育のアウトソーシングではありません。教員と学生と地域が、共に学ぶ場であり、それをくるくる回していくことが、多面的な効果をあげることにつながると考えます。それぞれがいきいきと活動しておれば、魅力や成果は、おのづと出てくるものではないでしょうか。

最後に、残念ながら、欧米では地域やNPOが主にこの体験学習をになっており、大学は専門教育に特化できる仕組みがあると私は考えています。地域が弱体化し、NPOが育たない日本では、大学教育にこの点が課されてきました。私は、学生を受け入れられる、地域やNPOをどのように育てるのかという点も、大きな課題だと思います。

黒木デザイン学校2009 【お茶】 社会化プログラム発表会

環境・遺産デザインプロジェクト?演習の社会化プログラムとして、福岡県八女郡黒木町笠原の笠原東地域交流センター「えがおの森」(元笠原東小学校)に2009 年8月17 日(月)に日帰りで、社会化プログラムの発表会などを実施しました。

前回の調査プログラムの成果を用い、地域活性化に寄与できるモノ、仕組みを提案し、教育活動の中から地域への還元を行おうという趣旨です。

詳細は、環境・遺産デザインコース、プロジェクト演習ブログに掲載しております。ご参照ください。

「里山・田園保全リーダー講座」を福岡県と協働で実施

asahiro2009-08-19


このたび山村塾では、
里山・田園保全リーダー講座」を福岡県と協働で実施致します。
里山や田園の保全活動を広めるには、活動を支えるリーダーの存在が必要不可欠です。

今回の講座を通じて、リーダーに必要な知識や実践活動の習得、また、参加者の方々とのネットワークづくりを目指しています。

皆様のご参加お待ちしております!! (チラシ画像はこちら)


福岡県平成21年度NPO との協働によるリーダー養成事業
◆◇◆ 里山・田園保全リーダー講座2009 ◆◇◆
          参加者募集!!

仲間と一緒に楽しい活動を行うには?
グループで安全に作業を行うには?
森づくり活動に求められるリーダーシップとは?

参加型の実習や実地研修を取り入れた基礎から現場までの幅広い内容です。地域の里山や田園の保全に、住民参加や都市農村交流を通して取り組んでいる方、これから取り組もうとしている方のご参加をお待ちしております。

詳しくはHP(http://www.h3.dion.ne.jp/~sannsonn/
または以下をご覧ください。

◆講座概要◆
以下の3つの講座とシンポジウムを実施します。

●入門講座 <里山・田園保全活動リーダー入門>
 9月に連続2回、県内3カ所(福岡、北九州、久留米)で開催
●専門講座<リーダートレーニング>
 10月に連続3回、福岡市で開催
保全活動実習<里山・田園保全ボランティア実習>
 10/31( 土)〜11/3( 祝)
 3泊4日、八女郡黒木町で開催
●シンポジウム<里山・田園保全リーダーミーティング(仮題)>
 平成22年 2/11( 木・祝)
 都久志会館(福岡市)にて開催

◆各講座について◆
●入門講座<里山・田園保全活動リーダー入門>
 里山保全のことを知りたいという初心者の方も歓迎!
○第1回 里山・田園保全概論
 里山・田園保全活動の目的と意義/活動事例紹介/求められるリーダー像とは?/その他
○第2回 活動運営のイロハ
 リーダーの役割と一日の流れ/グループ活動を運営するには?/安全管理の基礎/その他
□とき・ところ:3 会場からいずれかを選択。
 いずれも18:30〜21:00(18:15 分受付)
・福岡会場 第1回 9/9(水)、第2回 9/16(水)
 アクロス福岡 607 会議室 福岡市中央区天神1-1-1
 http://www.acros.or.jp/
・北九州会場 第1回 9/10(木)、第2回 9/17(木)
 ウエルとばた 83・84 会議室 北九州市戸畑区汐井町1-6
 http://www.wel-tobata.jp/index.html
・久留米会場 第1回 9/18(金)、第2回 9/25(金)
 えーるピア久留米 男女平等推進センター210・211 研修室 久留米市諏訪野町1830-6
 http://www.elpia.kurume.fukuoka.jp/
□対象:里山や田園を守るボランティア活動を行っている方、これから活動を始めたい方、関心のある方はどなたでも!
□参加費:無料
□定員:各会場20名

●専門講座<リーダートレーニング>
 安全で楽しい活動を続ける技術を身につける!
○第1回 仲間をまとめる力 10/6(火)
  リーダーとリーダーシップ/その他
○第2回 課題を解決する力 10/13(火)
  課題解決ワーク/責任と権限/その他
○第3回 安全を確保する力 10/20(火)
  リスクアセスメント/危険予知/その他
 ※いずれも18:30〜21:00(18:15 分受付)
□ところ:福岡市NPO・ボランティア交流センターあすみん セミナールーム
 福岡市中央区大名2-6-46 福岡市立青年センター5F
 http://www.fnvc.jp/
 ※第3回は会場未定
□対象:活動やリーダーの経験がある方
□参加費:無料
□定員:20名

保全活動実習<里山・田園保全ボランティア実習>
〜3泊4日のワーキングホリデー(保全合宿)〜
 国内外から集まった「里山80 日ボランティア」との共同作業。
合宿形式での遊歩道整備や里山整備といった現場の体験を通じてリーダーの役割を学びます。
□とき:10/31(土)〜11/3(火・祝)の3泊4日
□ところ:笠原東交流センター「えがおの森」 八女郡黒木町大字笠原9836-1
 http://www.egaonomori.jp/
□対象:入門講座or 専門講座の受講者
□参加費:6,000円(食事・宿泊込み)
□定員:15 名

●シンポジウム<里山・田園保全リーダーミーティング(仮題)>
〜参加・体験型のプログラムを取り入れたシンポジウム〜
 事例報告や全体ワークショップを通じ、里山・田園保全に関わるリーダーや団体間の交流と情報交換、ネットワーキングを進めます。
□とき:平成22年 2/11(木・祝)
□ところ:都久志会館 福岡市中央区天神4-8-10
 http://tsukushi-kaikan.jp/
□対象:関心のある方はどなたでも
□参加費:無料
 ※詳細は企画中です。

◆お問合わせ・お申込み先◆
山村塾事務局 小森耕太
〒 834-1222
福岡県八女郡黒木町大字笠原9836-1 えがおの森 内
TEL・FAX 0943-42-4300
Eメール:sannsonn@f2.dion.ne.jp
山村塾HP http://www.h3.dion.ne.jp/~sannsonn/

◆お申込み方法◆
以下の項目をご記入の上、FAX、メール、郵送にてお申込みください。
各講座・実習とも、実施日の4日前、または定員まで受付けています。
※2/11に予定のシンポジウムは、後日、広報と募集を行う予定です。

━━━━━━━ 申し込みフォーム ━━━━━━━
1)お名前
2)ご所属
3)ご住所
4)電話
5)FAX もしくはメール
6)ご希望の講座・実習に(○印)を入れてください。
 □入門講座 ※会場をお選びください
 ・福 岡会場 (   ) 9/9(水)、9/16(水)
 ・北九州会場 (   ) 9/10(木)、9/17(木)
 ・久留米会場 (   ) 9/18(金)、9/25(金)
 □ 専門講座 (   )
  10/6(火)、10/13(火)、10/20(火)
 □ 里山・田園保全ボランティア実習 (   )
 10/31(土)〜 11/3(火・祝)
7)保全活動の経験
 いずれかに(○印)を入れてください。
 □里山保全の活動経験はない (   )
 □里山保全の活動の経験がある (   )
 □里山保全の活動で数名のグループの運営や指導、
  とりまとめの経験がある  (   )
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◆主催:福岡県 農林水産部 農山漁村振興課
 企画・運営:山村塾
 協力:日本環境保全ボランティアネットワーク(JCVN)、ふくおか森づくりネットワーク
 ※この事業は、福岡県平成21年度NPOとの協働によるリーダー養成事業を受け、福岡県とNPOの協働事業として実施されます。

◆講師プロフィール◆
○朝廣 和夫 さん
九州大学大学院芸術工学研究院
環境・遺産デザイン部門 准教授
2004年に在外研究員として英国に滞在。里山保全や市民参加の分野で教育・研究に取り組む一方で、「国際里山・田園保全ワーキングホリデー」や「ふくおか森づくりネットワーク」など実践的な活動にも数多く携わる。

○志賀 壮史 さん
NPO 法人グリーンシティ福岡 理事
1996年よりまちづくりや環境保全ボランティア活動を実践する。
ファシリテーション(会議やワークショップの進行)技術の講習を全国各地で実施する一方、保全活動や環境教育のボランティア育成にも取り組む。こうのす里山くらぶ代表。

○小森 耕太 さん
山村塾 事務局
2000年4月に八女郡黒木町に移住。以後10年間、地域の農林家と連携し、都会からのボランティアや農林業体験希望者を受け入れ、ワーキングホリデーや里山ミニワークなど、様々な企画を立案し実行中。特定非営利活動法人森づくりフォーラム理事、森づくり安全技術・技能全国推進協議会理事。

■地域情報サイト「志摩ねっと」さんに、本講座のチラシを掲載いただいています。

環境設計から生まれた建築

asahiro2009-06-06


今日は、渾沌会(九州大学九州芸術工科大学同窓会)が行われた。

この催しものの一環で、「私の仕事ライブ版 芸術工学座談会」を行っている。
今年の話者は下記のお二人に来ていただいた。

石原 健也  (環境10期)
株式会社デネフェス計画研究所
千葉工業大学准教授

坂口 舞 (環境29期)
(有)設計機構ワークス

坂口さんは住宅を中心に設計活動をされている建築家です。打合せ掲示板を施主との間に設け、制作過程をオープンにすることで、人をつないでいく取り組みは、とても面白いと感じました。「こどもの」や「Doctor Design Lab」などの、テーマ型のネットワークも、とても様々な分野の参考になります。

石原先生は「Experience from millimeter to kilometer」というテーマに基づき、最近のお仕事を交えお話しいただきました。クリストファー・アレキサンダーの「人と場をパターンとする」という考え方を紹介いただき、ご自身の作品の中で、「行為と場のストラクチャー」を模型とスケッチでとことん検討する姿勢は、まさに、今回のテーマである、「環境設計から生まれた建築」を彷彿とさせていただきました。

お二人の先生方には、熱く御礼申し上げます。

懇親会では、退職された懐かしい先生方のお話があり、特に印象的だったのは、由良先生です。「渾沌とは、先が見えないということ。宙に手を突き上げ、探り、何かをつかもうとする。それが、芸術工学のデザインだ」という趣旨のお話いただきました。既知のことを整理し進める学問も大切ですが、このような姿勢が私達の役割と改めて感じました。