故山下弘文氏を訪ねて(日本湿地ネットワークシンポジウム)

asahiro2009-09-19


先日、JAWAN(日本湿地ネットワーク)のシンポジウムを聞きに家族で長崎県諌早市を訪ねました。演者は鹿児島大学の佐藤先生、お題は「故山下弘文氏と歩いた干潟」です。

先生のスライドの中に、私のM2の頃の姿の写真がありました。当時、エコロジカルプランニングの研究室に所属していた私は、なぜ、干潟が大切なのかを知りたくなり、諌早干拓事業に反対活動をされていた故山下氏を訪ねました。ちょうどそのころ、佐藤先生も諫早干潟の底生生物調査を開始された年であり、私達は一緒に、まだ堤防の閉め切り前の生きていた干潟を掘って歩いたのです。私がドロドロの干潟を掘ると、2cmぐらいの透明のピンク色をした生き物を見つけました。先生に「これはなんですか?」と聞くと、「お〜、これはわからん」という・・・具合に、干潟の大切さを、甚だ実感する2日間を過ごしました。

16年たって、今回先生に再度種名を尋ねましたが、おそらく新種であろうということでした。ゾクゾクと珍しい生き物が出てきていた諫早干潟。失われるのはあっという間でした。世間が自然に目を向けず、人知で全てを制御しようとした諌早干拓。後にゴールドマン賞を受賞された山下氏は、開門を見ることなく急遽旅立たれてしまいました。「負けて当然、勝てばおおごと」としゃべりながら、屈託のない笑顔で干潟を掘り、漁民と話し、行政資料を集め、日本湿地ネットワークで連帯を呼びかけた行動力は、魅力的であり、私が研究を始める原点となりました。潮受堤防の閉め切り前に師等と触れた干潟の感触は、忘れられない体験です。

シンポジウムのお題をニュースレターで発見し、思わず参加し、佐藤先生とも旧交を深めることができました。写真の干拓堤防を歩き、左右の干拓内と海の色の違いを見ながら、干潟の浄化機能、生物多様性はアマゾンより大切な身近な自然環境として、私達は認識すべきだと考えます。