フィールドワーク及びNPOとの連携

asahiro2009-09-09


先日、全学のFD(Faculty development)で講演を行いました。全体のテーマは「体験活動を通じた学習成果の達成」です。会の趣旨は、次のようなものです。

近年の大学教育において、学生の課題探求や問題解決等の能力を身につけ学習効果を高める教育方法の一つとして、学外での体験活動を取り入れた実践教育(サービス・ラーニング)が注目を集めている。それらは、大学で学んだ知をもとに実際の体験活動を通じて深め、生きた知識を獲得するという観点から、個々の教育課程における学習成果の効果的な達成のために有効な方法ととらえられている。
今回の全学FDは学内の取り組もを報告し、体験活動を通じた教育方法の展開について考察する。

さて、私達の芸術工学部環境設計学科は、もともと、九州芸術工科大学の草創の時代から、フィールドワーク、体験教育が、調査、設計、発表の中で取り入れられていました。フィールドでの見学、地域の人や専門家とのふれあい、調査による課題の発見、計画・設計活動、そして、プレゼンテーションです。

いち卒業生として、この流れの演習は当たり前のように受け入れ、現在も続けられています。ある面、これらの活動が、学生の満足度、大学院の充足率などに繋がっていると思われます。もちろん課題もあり、教員・学生の負担は相応に大きく、地域やNPOの受け入れ体制にも課題があります。

さて、全学FDで私は、「学生は講師に学び、自ら学ぶ。でも、共に学ぶ場づくりが実践教育の要である。」という観点から、学科教育と農山村での新入生合宿研修などの話をさせていただきました。また、他のお二方の先生からは、博士の企業インターン活動、教育ボランティアのお話がありました。後半のディスカッションでは、様々な観点が出され、下記に列記しておきます。

  • そもそも、研究者は教育者か? 教員の更なるFDが必要では。
  • 新しい手法の開発だけでなく、既存の教育資源の活用の重要性が再認識された。
  • 原因主体の認識の学習状況を作り出すことが手掛かりとなる。
  • 全学で体験学習を強化する組織が必要とされるのではないか。ボトムアップでは変われない。まずは、トップが現場の話を聞くことから始めねば。
  • まずは、養成人材像を明確にし、各ポリシーに含める必要がある。
  • 外で生き生きしてきた学生が、大学で元に戻ってしまった例もある。

などなどです。
個人的な感想として、実は、九大の中では、このような活動は、あまり取り入れられていなかった感があります。しかしながら、多くの先生から「実はうちでも・・・」という声があり、プログラムに導入されたい先生方がおられるようでした。体験教育は教育のアウトソーシングではありません。教員と学生と地域が、共に学ぶ場であり、それをくるくる回していくことが、多面的な効果をあげることにつながると考えます。それぞれがいきいきと活動しておれば、魅力や成果は、おのづと出てくるものではないでしょうか。

最後に、残念ながら、欧米では地域やNPOが主にこの体験学習をになっており、大学は専門教育に特化できる仕組みがあると私は考えています。地域が弱体化し、NPOが育たない日本では、大学教育にこの点が課されてきました。私は、学生を受け入れられる、地域やNPOをどのように育てるのかという点も、大きな課題だと思います。