オルドス平原

asahiro2009-12-23


ここは、黄河万里の長城に囲まれた標高1300m程度のオルドス平原の続く地域です。来るまで私は知りませんでしたが、この街はエネルギーやレアメタルの供給都市として、とても裕福であり、速いスピードで都市開発が行われています。

田舎に目を向けると、緩やかな平原が広がっているかと思えば、傾斜を有する斜面は、あちこちに数メートルから数十メートルの侵食が見られました。聞くところによると、ある時期、羊毛の価格が上がったため、過度の放牧が行われ、被覆する植生が貧化したために生じたとのこと。今では、放牧が禁止され、痛々しい景観が広がっています。

侵食されていない土地にはヨーロッパアカマツの植林が広く実施されていました。日本の消費活動が関わった事態に、日中友好植林活動が展開されているそうです。


さて、オルドスの都市開発はこれまで尾根を削り谷を埋め、平面グリッド上の街づくりが進められてきました。区内には都市公園や多くの街路樹が植林されていますが、砂漠地帯のため夏場の潅水が行われています。このような街づくりへの見直しが必要とされているようです。

私は、この地域の自然植生、遊牧民の暮らしの中から選択的に選ばれてきた持続的な側面を探して回りました。ある、遊牧民の集落を訪ねたところ、薪や農用資材をとるために植えられたヤナギ類が萌芽更新されながら利用されており、ヤマアンズ、そしてエンジュの類も見られました。特にヤナギは羊に新芽を食べられないように台(ポラード)仕立てになされており、英国で保護されているような、立派な古木も複数見つけることができました。

おじさんやおばさん達の顔に刻まれたしわの深さと、大地に刻まれた浸食の深さの中に、都市や経済に翻弄され、失われていく自然と人の暮らしがあります。街は、時おり打ち上げられる花火のように感じられます。遠い将来、都市の人が、ここの自然と暮らしのあり方に思いを巡らし、その知恵に気付いてもらえるよう、保全を基軸としたデザインの専門家として、果たすべき役割があると感じました。