環境保全ボランティアリーダー養成講座を終えて

asahiro2006-10-04

久しぶりの更新になってしまいました。標記のイベントを無事に終えて、3年越しの仕事として一つの成果を得ることができました。

このイベントは、英国BTCV(英国環境保全ボランティアトラスト)のトレーナーに来日していただき、事務局と2日間の準備ワークショップ、4日間のリーダー養成講座、そして最終日に日本におけるリーダー養成の課題整理と今後の方向性を考えるワークショップという日程で執り行いました。

詳細は随時、このブログやWEBにアップしてゆきますが、概ね、下記のような成果を得ることができました。

  1. 国内初、英国BTCVの組織内向けリーダー養成講座を実施し、公式な技術移転が行われました。日本向けに提供されたパッケージは、Residential Leader, Day Leader, Risk Assessmentの内容と共に、最新のリーダーズガイドです。
  2. 4日間の講座は、BTCVのリーダー養成責任者により行われ、濃密なプログラムが提供されました。
  3. 本講座は、国際里山田園保全ワーキングホリデー10周年記念事業として開催され、今後の10年を見越した人材育成と、地域拠点作りの提唱が行われました。
  4. セブンイレブンみどりの基金、および、(社)国土緑化推進機構等のご協力により、参加者は福岡近郊のみにとどまらず、東京、信州、北海道など全国からリーダー、トレーナー、事務局長クラスなど、環境保全活動を支えている様々なキーパーソンの方々にご参加いただきました。
  5. 本講座の修了生を中心にリーダーズ・ネットワークを形成し、今後、JCVN(日本環境保全ボランティアネットワーク)の準備会を立ち上げてゆく方向性を得ることができました。
  6. リーダー養成に関する日本の課題について、次のような考えに至りました。私達のボランティア活動は、現在、サブリーダーレベルの技能を持つ人材に支えられており、私達はこれらの人々を対象にリーダー養成講座を実施し、安全と楽しみに責任を持てる人材を育成して行くことが求めらている。また、今回の講座のような、よりレベルの高いリーダー養成講座も必要であり、当面は、ゼロから日本独自のカリキュラムを考えるのではなく、BTCVのカリキュラムを基調とした講座展開が望ましいと思われました。
  7. 私達の使用するリーダーという言葉は、その責任と技能の範囲について、極めて不明瞭であると考えられました。今後、リーダーの責任範囲について、議論を深め整理することが求められます。今回のリーダーは、現場の環境保全活動において、15〜16名のボランティアをリードできる人材の養成をターゲットとされていました。その責任範囲は、主に、グループリーディングやリスクアセスメントなどの活動マネジメントであり、事前準備や多くの事務局業務は想定外とされています。私達の環境保全活動を強化するには、リーダーのマネジメント環境を整備し、リーダーが現場で活躍できる体制を持つことが不可欠であると考えられました。

以上の成果は、主催者として示すことのできる全体的な内容です。全国から参加いただいた方々には、各位、それぞれ、様々な成果をお持ちいただけたと思います。

私の個人的な成果は、英国BTCVの本質について、理解を得ていただけた。この一言に尽きます。

景観を保全する。これは並大抵の努力目標ではありません。資本主義社会の中で、多くの英国のNPOは土地を買収して保護・保全に取り組んでいます。しかしながら、このBTCVという団体は、土地を所有せず、人をインスパイアし、人材を育て、それを看板に景観保全の実現を目指している稀有な団体です。

NPOでありながら、一人の人材育成に何年もかけ、何百万というお金を投資し、ボランティアマネジメントのプロとして、各現場に派遣しています。私達の環境保全活動は、これほどまでに人材に執着し、育成に投資しているでしょうか? 否、私達は、環境問題や自然環境に焦点をあて、情報や知識の提供に終始しています。その育成人材像は、意識あるボランティアであり、一般市民やボランティアの環境保全活動を支援するプロではありません。ここに、決定的な日英の違いの一つがあると思います。しかしながら、共益よりも私益が優先される日本の土地所有制度の中で景観保全の強化を図るには、土地買収ではないこのBTCVモデルが一つの選択肢と考えられます。

これまで、プロの職能として彼らが積み上げてきた本質について、ボランティア仲間であっても、なかなか言葉では理解を得ることができませんでした。それは、彼らと一緒に、現場で汗を流すしかなかったからです。

今回、参加いただいた皆様方には、程度の差はあると思いますが、その本質に触れていただくことができたと感じています。私達は、少なくとも今後10年間、毎年、なんらかの形でリーダー養成講座を継続させ、このモチベーションを高めてゆきたいと考えています。