Conservation Corps

asahiro2008-08-28

先日、米国のEarthCorpsのExecutive Directorのスティーブ氏が来日され、東京でJapan Conservation Corpsの研究調査委員会および、下記のフォーラムが行われました。

米国Conservation Corpsに学ぶ、環境(地域)保全活動を通じた若者の育成プログラム
 〜若者が地域を変え、地域が若者を変える仕組みづくりを〜
  2008年8月27日(水) 新宿区角筈地域センター


Conservation Corps(以下、C.C.という)とは、米国で実施されているナショナル/コミュニティーサービスプログラムです。16〜25歳の若者が6か月から1年間、国立公園等の散策路作りや植林など、実践的な保全活動に従事し、このサービスを通じてコミュニティーの改善と、青年の実践的な技能向上、そして、環境保全を両立する教育プログラムです。その前身は1930年代の大恐慌時代にルーズベルト大統領が実施し、600万人の青年が環境保全活動に従事したCCC(Civilian Conservation Corps=環境保全市民部隊)にはじまります。現在では116のC.C.が42州とコロンビア特別区で活動しており、21,214人の若者が参加し、295,631人の地域ボランティアと共同して活動を展開しています。

このC.C.は、各地の地域のニーズに応じて様々な様態をしており、EarthCorps(アースコア、以下E.C.という。参考サイト http://www.earthcorps.org)は、シアトルを拠点とし、年間50〜60名のコアメンバーとスタッフにより活動を展開しています。E.C.の特徴は、他のC.C.のコアメンバーの多くが米国人が占め、C.C.のみで活動を展開するのに対し、約半分は海外参加者が占め、現場では、多くの地域団体の共同活動を展開しています。今回の委員会を主催したNICEの塚本氏は、日本のJapan C.C.を設立すべく、今回の調査委員会活動とフォーラムを開催されました。

今回、私はC.C.の勉強をさせていただき、大きな将来の可能性を感じました。ポイントを、下記にメモしてみます。
■ボランティアサービスではなく、コミュニティーサービス
E.Cでは、参加者を内部ではコアメンバーと呼び、外向けにはプログラム参加者と呼びます。活動は、ボランティアサービスではなく、コミュニティサービス(奉仕活動)として、プロフェッショナルなスタッフ・リーダーのもと、しっかりした保全作業が行われます。その活動は、地域のボランティア団体と連携することにより、生息地の保全などを高い質で実施できるそうです。
■コンセプトは「若者リーダー」「強い地域」「健全な自然環境」の3本柱
米国の社会背景として、国立公園の整備、地域環境の改善、ドロップアウトした若者の支援など、地域サービスが必要とされる理由があります。地域活動については、下記のような活動を展開しています。
・80名のリーダートレーニン
・リーダーボランティアのリクルーティング
・年間300のボランティアイベントへの参加(規模は5〜500名)
・地域活動の支援
・50の行政機関とNPOとの協働
また、自然環境保全活動については、次のような内容を展開しています。
・海岸や河川の改善
・外来植物の除去
・自生種の保全
・協定地区の管理やモニタリング
・散策路の管理活動や建設
などです。

■高いニーズ
C.C.への参加希望者は多く、E.C.の場合、競争率も高いとのこと。ターゲットは、大学入学前、もしくは卒業後の学生、また、不自由な状況をもった若者です。彼らは、地域に貢献したいという思いを実現する場所として、また、広い視野や知識、実践的な技術を身につける場所として、さらに、1年間のプログラム終了後、大学の奨学金を獲得できるなどのメリットが用意されています。1年間の生活補助費が手当てされている点も、ボランティアではなく、奉仕活動を担うプログラム参加者であるからです。

■地域を担うリーダーの育成
E.C.はカスケーディング リーダーシップという取り組みを行っているそうです。E.Cのメンバーは、小学校や中学校、地域のボランティアグループを訪ね、活動の問題点を指摘しあったり、安全で楽しい活動の実施方法を伝え、地域の将来を担う子供たちとの連携を重視されているそうです。目上のリーダーにあこがれる子供たち、小さいころから楽しいチーム活動が経験できることは、このようなサービス活動やボランティア活動への知識、感性、意識を段階的に養い、地域の将来を担うリーダー育成に貢献します。E.C.の活動は、単なる60人の活動ではなく、1000人、2000人の活動として展開することにより、行政や助成団体の支援を得ているそうです。

■財源
E.C.の財源は、年間約○○円で、その内25%が寄付、75%がFee for Serviceという行政等からによる事業委託費です。事業委託費の内9割が行政機関だそうです。

■ネットワーク組織による品質管理とロビー活動
C.C.はThe Corps Networkというネットワーク組織を有しており、The Excellence Corps Accreditationという認証制度を運用しています。いわゆる、相互に運営のチェックを行い、Corps活動の品質管理を行っています。さらに、行政や議会に対する要望活動を連帯して実施しています。

■日本への導入は?
さて、日本へのJ.C.Cの導入はどうでしょうか。「手入れ」を必要とする里地里山は、農林業の衰退とともに過疎化が進み、地域の草刈りや地域振興・環境保全活動を展開する余力がなくなりつつあります。一方都会では、若者がそのような活動を体験する機会が欠落しています。J.C.C.が地域に入れば、プロフェッショナルな自然・地域環境保全の組織が常駐することになります。それに伴い、若者の居住、地域との交流、地域サービスの支援、自然環境の保全の展開が期待されます。また、コアメンバーへの環境教育、環境管理技能の向上は、現場での実践活動を重ねることで、相当な学習量が確保されると期待されます。
しかしながら、日本への導入を考えるとき、里地里山でのJ.C.C活動は、若者を引き付ける動機づけを確保できるでしょうか。米国の場合、国立公園という魅力、また、そのようなパブリックアクセスの確保された公益性の高い場所が活動地として選定されています。日本の里地里山保全のニーズは、主に私有地です。そこで、私は、英国型の計画制度、地域マネジメントの導入、そして、私有地をオープンスペースとして位置づけ、市民のアクセスへと開放することが1つの筋道と考えます。
農林地の私有権、また、地域の閉鎖性は、生産以外の自然環境や景観の保全、レクリエーションや国土の保全などの価値が浸透しておらず、また、トップダウンの強い既存の仕組みは、新しい活動の展開を難しいものにしています。すなわち、農林業の衰退と共に、地域振興と環境保全の実施が困難になるのです。しかしながら、英国のように景観地域という地域制のゾーニングを行い、私権を制限し、その美しい景観や自然資源への一般市民のアクセスを確保できれば、J.C.Cや各種ボランティア活動が、里地里山の私有地に対し保全活動を展開する動機づけを確保することができると考えます。

私は、BTCVとワーキングホリデー(Conservation Holiday)の活動を経て、今年度、JCVN(Japan Conservation Volunteer Network)の活動展開を目指しています。また、BTCVが主だってはじめたCVA(Conservation Volunteer Alliance)の認証プログラムへの参画が求められており、認証取得作業を進めます。このCVAを構成する4つの主団体は、BTCV(http://www.btcv.org/),CVA(Conservation Volunteer Australia)(http://www.conservationvolunteers.com.au/)そして、米国のC.C.のネットワークであるThe Corps Network(http://www.corpsnetwork.org/)、最後に、Environmental Alliance for Senior Involvementです。E.C.のスティーブは、一般向けのConservation Holidayと若者向けのC.Cの両方を展開しているオーストラリアのCVAの活動が参考になるはず。日本の活動を展開するには、様々なパートナーと会話を進めながら、フレキシブルに小さく始めるのがよいと助言をいただきました。このような方向性について、今後の研究活動を模索したいと考えています。

なお、先日のフォーラムの終わりのあいさつで次の様なお話がありました。「アメリカのPeace Corpsは日本の青年海外協力隊にあたります。C.C.はその国内版であり、これほど地域環境保全のために展開しているのです。日本もそろそろ、国内版の青年地域協力隊の創設を検討すべき時期ではないでしょうか?」というお話でした。急ぐべき方向性だと感じます。