それでもU字溝

・家づくり

昨日は、がっくり落ち込みました。本ブログ(8月28日)日に石積み水路のU字溝の話題を出しました。

市長宛に請願書(一部修正したものをこちらからダウンロードできます)を提出し、市と地元の方々にご検討いただけました。ありがとうございます。市からは、出水する片方の法面だけコンクリート化を行い、底泥ともう片方の法面は石積みのまま残すという代替案を提示いただきました。

しかしながら関係者は、私の請願書に一理あるけれども、下記の理由で「それでもU字溝」という判断だそうです。

  • 維持管理が大変
  • 水田への速やかな導水
  • 自然は他にもある

再度、私から直接お話しをさせていただける機会を設けていただけるよう市にお願いいたしました。

私は、下記のように考えています。水路の形態は、治水、農用利水、管理、自然環境、生活環境、文化環境の6点から総合的に検討されるべきだと思います。

表形式で、単純評価するとこんな感じです。

1.現在の石積み水路
       課 題     /   利 点
治 水:水量ピーク時における隣接地への出水 / 普段は水が流れており問題ない
農用利水:    導水が遅い?       /     ?
        水を涵養してしまう?
管 理:      浚渫・草刈り負担     / 水路と人の関わり
自然環境:    ?         / 動植物の生息環境
生活環境:    ?         / 雑排水の浄化、無臭
                      / せせらぎの音、子供の遊び場
文化環境:    ?         / 昔の地割に基づく石積み水路

2.3面コンクリートU字溝水路
       課 題     /   利 点
治 水:水量ピーク時の負荷を下流に押し付け / U字溝エリアは出水しない(下流の排水がOKな場合)
農用利水:       ?         / 田への早い導水、水漏れがない
管 理:    水路と人の関わりの喪失    / 浚渫・草刈り負担の軽減
自然環境: 生息空間の喪失      /    ?
生活環境: 浄化作用の喪失      /    ?
         醜悪化、悪臭問題
          人々の忌避    
文化環境: 文化的価値の喪失     /    ?

3.代替案:出水側の法面工、底泥と一部石積み保全
       課 題     /   利 点
治 水:         ?        /  隣接地への出水はない
                        また、ピークを遅らせる
農用利水:若干田への導水が遅く水を涵養する / 以前より早い導水、水漏れも若干減る
管 理:      浚渫・草刈り負担     / 水路と人の関わり
自然環境:    ?         / 動植物の生息環境
生活環境:    ?         / 雑排水の浄化、無臭
                      / せせらぎの音、子供の遊び場
文化環境:    ?         / 昔の地割に基づく石積み水路


私が特に問題にしているのは

  • U字溝の課題:管理、自然環境、生活環境、文化環境の観点
  • これを喪失してまで、なぜ、市の代替案が受け入れられないのか。100%コンクリートにしなければならない論拠はないはず。
  • 都市マスタープランの景観形成の方針や将来像に示された内容に対し、住民から反故にし、また、行政は指導責任、事業実施責任を負わないのか。

私がこの小さな水路にこだわるのは、この事業に地域の課題が凝縮されているように感じ、また、この小さな水路の保全さえ検討できないのであれば、農山村の景観管理による振興は遠い夢に終わるような、そんな危惧を抱くからです。

自然環境からいえば、里地里山に日本の希少種の5割以上が分布しています、地域遺伝子の保全が急務であること。
生活環境からいえば、下水道が普及していない本地域の石積み水路をU字溝化すれば、汚泥と悪臭がでるのは必至。
文化環境からいえば、世の公共事業は石積みや伝統的景観の復元に税金を支出しているのに、なぜ、残そうという意見が地元にないのか。
管理からいえば、農林水産省の「食糧・農業・農村基本計画(平成17年度)、3.農村の振興に関する施策、(1)地域資源保全管理政策の構築、ア 農地・農業用水等の資源の保全管理施策の構築」に書かれてあるように、「農地・農業用水等の資源は、食料の安定供給や多面的機能の発揮の基盤となる社会共通資本である。しかしながら、こうした資源は、過疎化・高齢化・混住化等の進行に伴う集落機能の低下により、その適切な保全・管理が困難となってきている。このような状況に対応するため、地域の農業者だけでなく、地域住民や都市住民も含めた多様な主体の参画を得て、これらの資源の適切な保全管理を行うとともに農村環境の保全等にも役立つ地域共同の効果の高い取組を促進する。」と書かれています。

石積み水路をU字溝化する問題は、スギ・ヒノキ人工林や竹林の問題と極めて似ています。経済的にペイしないから放棄する。手入れを止めるのです。その環境を見て、自然が豊かだ、美しいと思う世間に対し、私達は取り組まなければなりません。
農業に携わらない地区住民や、都市民は、何ゆえに地域資源保全管理を協働で行うのでしょうか。それは、地域の自然、景観、健全な子供たち、安全な食料、そして様々な命を支える農家の方々の営みを守りたいからに他なりません。そのメッセージを、地元から出す必要があるし、市は公務としてリードする義務があります。農山村が石積み水路を完全U字溝化してしまうことは、スペードのエースという公共の看板・ブランドを捨てるようなものです。

次回は、このような話を、地元の方々にしてみようと思います。