古民家再生

asahiro2006-06-06


私事で恐縮であるが、ある里山景観の美しい地域の古民家再生の夢を持ち、明治34年築の物件について、M建築家に調査をお願いした。
なんせ、古い物件である。まずは、専門家に痛み具合と、再生の価値があるかどうかを見てもらう必要があるからである。

結論は、残念ながら止めたほうが良いとのことであった。
以前、自分の素人の目で見たときは、古い梁柱があり、床下の腐りも無く良いのではと思ったものである。しかし、現実は甘く無かった。

まず最初に、M氏と床下にもぐってみると、独立基礎のほとんどがコンクリートブロックを用い、すべて新規にやり変えてあった。写真の基礎は、薄い木片が残っており、以前、柱を切って付け替えたことが分かる。床下を出て、よくよく一部残っていた古い根太や垂木を観察すると、以前シロアリの食った跡が見つかった。土間の水周りで用いた水作業によるものと推察されるが、床下補修の原因と思われた。
また、柱を良く見ると、2階増築の重みで沈み、補強をしていたり、2階の床材も強度不十分でたわみが生じており、結果的に窓や襖の建付けに影響していた。家の北側は土間を部屋に改造したと思われるが、土壁と柱の傷みが激しかった。

100年近くの歴史を持つこの家は、家主が代々修復や増築を繰り返し、適宜補修しながら住みこなしてきた状況が分かる。もともと、それ程立派な小屋組みではなく、仕事もそれ程高い技術で行われてきたものではない。一般的な農村の民家であり、農業の営みの中で家主と地域の大工による苦心が伝わってくる。

しかしながら、古民家再生という観点に立つと、苦しい選択肢である。もともと、この物件は、更地にして売るということができず、基本的に中の改装で対応することが条件だった。この場合、柱梁のスケルトンの傷みが無いことが求められる。再生するのであれば、後世も再生し続けられることが望ましいであろう。
この物件の場合、再生には相当のコストがかかり、再生後も問題が生じる可能性が高い。元々の造りがあらいため、建築的な魅力にも欠ける。自分で修復しながら住みこなすには良いが、相当の時間と覚悟がいる。

結論として、諦めざるを得なかったわけではあるが、この建物の行方は今後どうなっていくのだろうか。文化財であれば、部材を交換して形態を後世に残すのであろうが、一般農家建築はそうも行かない。湿度の高い日本特有の古民家保全の難しさがこういうところにあるような気がした。