福岡県八女郡黒木町において、これまで「国際里山田園保全ワーキングホリデーin福岡」を9回行ってきた。地元の山村塾や林研グループ、研究室、BTCV、黒木町などのパートナーシップで継続されてきている。来年度10周年を迎えるに当たり、今年度の報告書の「今後の方針」に下記の文章を掲載しました。新しいステップに向けた皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

1)これまでの流れ
これまで主催者は、英国BTCV、及び各種団体が協力し、国際ワークを1997年より、毎年(全9回)実施してきた。また、各地の団体が兵庫、高知、長野、昨年は愛知万博でも実施しており、一つの合宿型ボランティア活動として定着した。その効果は、棚田の石垣修復、森林管理、散策路づくりといった物理的な側面に留まらず、人材の中に蓄積されてきたといえる。参加者の活躍の状況から、国際ワーキングホリデーは1つの活動様式として成熟し、人材育成事業として寄与できている。
しかしながら、今後の10年、もしくは持続的な活動継続を展望すると、主に下記の3点の課題を上げることができる。

①リーダートレーニングシステムの構築
そもそも、BTCVの協力のもと国際ワーキングホリデーを行う理由は、彼らのボランティア精神と実施ノウハウを現場で学ぶことにある。日本では、トレーニングを積んだリーダーが不在のため、技術者としての地元農林家、コーディネイターとして大学関係者がリーダーの役割を分担してきた。活動継続の中で、数名のリピーターがリーダーの役回りをできるようになったが、安全で楽しい活動を運営できる人材確保に苦慮する状況が続いている。それは主に、人材が定常的な流動すること、そして、リーダー養成システムが不在であることに起因している。

②BTCVの国際戦略の変更
これまで、日本の事業はBTCVの直轄サポートとして国際リーダーの派遣を受けていた。しかしながら、BTCV本部より次のステップへの移行(つまり、リーダーを日本で育成すること)の打診があり、今後は、日本が自ら国際標準のトレーニングを実施し、ボランティアの活動管理を自立的に行うよう求められた。

③地域内外への展開
国際ワーキングホリデーは、地域内外に認知度を高めてきた。しかしながら、イベント性の高い国際活動であるため、いつでも、どこでも、実施可能な形態とはいえない。このことが、下記の二つの課題をもたらしている。

  • 日ごろ行うべき普及型の国内ワーキングホリデーの展開がみられない。
  • 人の集まる夏に10日間という形で行うため、地元の農林業の暦と整合性がとれない。

これらの課題は相互にリンクしており、多時期、他地域におけるワーキングホリデーの安定的な展開を得るためには、プロ意識を持ったリーダーを養成し、継続的に支援していくシステムの構築が必要不可欠であると考えられる。

2)今後の方向性
本実行委員会は国際ワーク10周年を向かえるに当たり、これらの課題の包括的な解決を目指すため、平成18年度に「実践型環境保全ボランティア育成事業」に取り組む予定である。これは、BTCVの国際戦略の目標である「環境保全ボランティア活動の標準化」について、本実行委員会もこの方向性に向けてコア団体として機能する形を目指す。具体的には、BTCVとトレーナー育成事業を行い、その修了メンバーで、(仮称)環境保全ボランティアネットワーク(JCVN: Japan Conservation Volunteers Network)の立上げを行い、本実行委員会は、この団体の準備委員会を経て統合する。また、このメンバーを国際ワークのリーダーとして位置づけ、本実行委員会の構成団体である山村塾をパートナー団体とし、国際ワーキングホリデーを実施したり、各地の新規パートナー団体と、新たな事業の構築可能性を探る。団体の合意が取れるようであれば、国際環境保全ボランティア同盟(CVA: Conservation Volunteer Alliance)の認証プログラムに登録し、国際認証の取得を目指す予定である。