里山保全体験ツアー第三日目、イノシシパーク案

ナタネの種まきの準備、溝切り


里山保全体験ツアー第三日目。
10月上旬のこの季節。黒木の棚田は稲刈りが行われ、かけ干しの風景がみられる。本ツアーでは、休耕田を利用して、ナタネの種を蒔く作業を取り入れた。休耕田の草刈、刈り草の焼却、耕転は事前に農林家にお願いし、当日は、溝切りをして、30cm間隔で穴を掘り、5〜10粒ずつ種を蒔き、軽く土を被せるということを行った。写真のような、抜けるような青空の下、程よい日陰となっている朝の棚田の作業はとても気持ちが良い。

午後は、12年生のスギの枝打ちである。平成3年の台風で風倒木被害にあい、平成5年に植林した林分である。標高650m程度、尾根を超えると隣は星野村。参加者は、かるく準備体操をし、ヘルメット、ノコギリ、軍手という軽装備を整え、手の届く範囲で、枝を落としていく。
作業前のスギ林は、人も入れないように枝が密生しているが、枝打ちが進むにつれ、目の前のがすっきりし、太陽の光が林床に差し込み、気持ちの良い森が広がっていく。このツアーでは、参加者にもっとも人気のある作業である。

休憩時間に農林家とイノシシの話題をしながら、ふと思いついた。「イノシシパーク(仮称)」。
尾根部などの風倒木被害地を中心にドングリのなる広葉樹林を復元し、電線でイノシシを囲い込んではどうだろうか? 次のような多くのメリットを期待することができる。
広葉樹林の森を復元し、地域の生物多様性が高まる。
・尾根部に台風に強い森を育てることにより、スギ斜面林の育成が良くなる。
・広葉樹のドングリがイノシシの食料となることで、農作物の被害が減る。
・電線で囲い込むことにより、美味なイノシシ肉を得ることができる。
・山林景観が保全される。
・新しいツーリズムやアメニティー空間をつくることができ、産業を振興できる。

以上、余談ではあるが、このような可能性を真剣に考えるべきだと思う。

黒木町の広報担当の横溝さんが取材にこられ、こんなことを話されていた。中学生にヒアリングしたらとても面白いことを言っていた。「都会には普通にゴミが落ちているけれども、ここには普通にクリが落ちている。」「ここは、毎日、風が違う。」普段、私達が言葉にしないことを、都会の中学生は敏感に感じているんですね〜。

ここは、過疎化に悩む山村であるが、村の人々の笑顔からは、生活に対する自身と誇りを十二分に感じることができる。ゴミ一つ落ちていない町内は、明らかに都会とは異なる地域社会である。このような景観、地域、人、農林地全体と都会の私達が関わる事。そのような活動を通して、確かな都市・農村交流が実現できるのだと思われる。