人工林施業の課題と市民ができること

先日、森林と市民を結ぶ全国の集い九州プレ勉強会として、九州大学大学院農学研究院の佐藤宣子先生の標記の講演会がありました。印象に残ったことをメモします。

九州は全国でもスギ・ヒノキ人工林率の高いところで、福岡県は2000年センサスで73%です。この27年間木材価格は減少をし続け、山の管理はままならない状況ですが、この数年、上昇傾向が見られています。その要因は、ユーロ高、中国等の市場拡大等にあるそうです。
ところが、2つの問題点を指摘されていました。
一つは、木材価格は製品価格、原木価格、立木価格の3つで構成されますが、山元の支払われる立木価格の下落が著しいこと。
二つ目は、ホワイトウッドの上がりに対し、グリーン材がついて行ってていないことの2点です。先生の着眼点は、「グローバル・マーケット対応で、山元は保てるのか?」ということでした。昨今指摘されている皆伐放棄地問題をどう克服し、持続可能な林業を強化するのかについて、いくつか指摘されました。

ポイントは、施業の集約化ですが、皆伐放棄地問題を検討するには、伐採方法のあり方や、森林計画順守のチェック制度の検討が必要ではとのことでした。

この適切な人工林の施業と配置のあり方について、下記の文献を紹介されています。

森林施業研究会編『主張する森林施業論』J-FIC
藤森隆郎『新たな森林管理 〜持続可能な社会に向けて』、全国林業改良普及協会

藤森先生は、今年10月12日〜13日に球磨村石の交流館で行われる、NPO法人九州森林ネットワークが主催する「第8回九州森林フォーラムin球磨」で基調講演されるそうです。

私がとても共感させられたのは、「林業が良くなれば環境が良くなる」という予定調和論からの脱却が必要であるというお話でした。

天然林を含めた森林配置を積極的に行うこと。
そのためには、まずは、丸太価格の上昇、環境配慮コストの助成、森林法のあり方、森林・林業のコミュニケーション能力・発信力の向上、コーディネイターの必要性を指摘されました。

時間的にも空間的にも、消費者と生産者の間の大きいというか、離れた森を扱うということは、地球環境問題と似た側面が多々あるように思います。ゴア副大統領が「不都合の真実」でしてきした「モラルの問題」ということも大切ですが、安田喜憲先生の指摘する厳しい規制も必要に思えます。養老孟司先生は「いちばん大事なこと、集英社新書」の中で、「手入れ」を基調とした日本の自然・文化環境の保全を進める1つの方向性として、複雑な現実を丁寧に情報化する英国に習えと書かれています。

森林施業計画をまちづくりとしっかりリンクさせ、計画と事業を進めることが、やはり日本の現場はできていないということが大きいように思いました。