最後の卒業式

1月26日から、ほぼ2ヶ月間ブログの更新が滞ってしまいました。この間、イベントを実施したり、報告書を書いたりと、なかなか書く時間が取れなかった。特に、最近、第二子が生まれ、忙しくも楽しい日々を過ごしています。

今日は、平成15年に九州大学と統合されて以来、『九州芸術工科大学』の学部4年生が卒業する最後の卒業式となりました。

この卒業式では、かつての単科大学らしく、二百数十名の卒業生の名前が、一人一人呼ばれます。小さくとも美しいキャンパスで記念撮影を撮り合い、多次元ホールでは簡単な立食パーティーで盛り上がります。その後は、三々五々、謝恩会に出て、夜遅くまで飲みに行くというアットホームな一日です。

学生を残してなくなった九州芸工大の学位記授与式は、九州大学総長が執り行います。総長の告辞の中で私は、次の内容が心に残りました。
『ここまで芸術工学を育てていただいた、卒業生、先生方、関係者の方々に感謝いたします。芸術工学部芸術工学府は永遠に大橋の地で引き継がれてゆきます。』
総合大学に統合された単科大学の行く末に、私達は一抹の不安を感じないわけではありません。総長のこの言葉は、芸工大が創設された約40年前に標榜した『技術の人間化』の理念を、九州大学が次の世代へ繋ぐ使命を持つと明快に示していただいたと思われます。

また、セレモニーの最後に、芸術工学研究院長は初代小池学長の言葉を紹介されました。芸工大設立時に小池学長が文部省とやり取りする中で、芸工大の育成人材像を『Missing Technician』という言葉で説明されたとのことでした。卒業生にとって、これは言いえて妙な言葉に感じられます。誰もが取り組まない課題の解決、見出されていない新たな価値の創造を、私達は孤独に切り開こうとしています。Missingはサルと人間のあいだの見つかっていない人種のことに関連する語のようです。私達は芸術と工学だけでなく、あらゆる分野の見出されていない接点を、デザインすることにやり甲斐を感じています。

個人的に、私が『Missing Technician』で居られる事は、幸せだな〜と思いました。
九州大学芸術工学は、きっと、そのような卒業生を、これからも送り出し続けるに違いない。リーダーの話を聞きながら、そんな思いになれました。