国民参加の森づくり

asahiro2006-07-16


今日は社団法人国土緑化推進機構、平成18年度林野庁補助事業である「NPO創造的森林づくり推進事業」の集合研修・ヒアリングに、専門家として参加するため、山梨県北津留郡小菅村寺子屋自然塾を訪ねた。神田から青梅行きに乗り奥多摩駅まで約2時間、そこから車でさらに40分程度のところである。

福岡にいると、東京に森があるなどということは、あまり想像できない感じだが、ここまで来ると、美しい山の斜面が車窓に迫り、九州と変わらぬ村の佇まいがある。

さて、この緑推の耳慣れない事業。実は今年度から新規事業として開始されている。その目的は、昨今の森づくりの多様化を受け、森づくりだけでなく、市民団体のネットワークを構築し、地域の振興や裾野を広げる事業へ支援を行うためである。なんと、この事業は、イベントや活動に対する補助ではなく、企画、新規パートナーへの渉外・交渉、そして、イベントの計画に対し行われる、かつて無い画期的な事業である。この集合研修は、交付対象担当者が集まり、専門的な話題提供やディスカッション、ヒヤリングを通して、それぞれの企画を参加者みんなでブラッシュアップさせることを目的に開催された。

一般的に、助成申請書を書くときは、1人や仲間とああでもない、こうでもないといいながら書いたり、時間が無いのでよく考えずに出すことがままある。しかしながら今回は、書いた本人が、もう一度、外の視点からのアドバイスをもらい、ゆっくり自分の企画と向き合いながら、考えを深めてゆくという点でこれまでに無い事業といえる。

なぜ、このような事業が創出されてきたのであろうか。それは、森づくりの社会化・情報化が従来の林野関係者だけよりも、パートナーシップ型に広げた方が良いという判断だと思われる。

日本の多くの林野は、小さい面積で多くの所有者に所有されており、林業というよりは、農業の合間に山の手入れもすると言うような、地域の営みとして管理されてきた。森づくりは、人づくり、地域づくりであり、もともと地域性や文化性の中で保たれてきたと思われる。しかしながら、拡大造林以降、木材の大量生産が大量消費に結びつかず、都市型社会と過疎化が進む中で、森の効用は、失われつつある。

日本人の8割が都会に住む中で、国民参加の森づくりを進めるには、森に関わってきた人々のみによる森づくりだけでなく、これまで、森に関わってこなかった新しい人々との関係模索が必要不可欠といえる。

今回出てきたアイデアの中には、森の幼稚園や、学校の森、アートの森や企業の森など、様々である。

東京農大の宮林先生は、「これまでの国民参加の森づくりは楽しい、生きがいというような中で進められてきたが、さらに参加型のコラボレーションを進めるには、安全という責任がキーワードになる。」と指摘された。これは、今後10年、発展・普及期に入るために、その前に私たちが克服しなければならない課題ということであろう。

来年から林野庁も森づくりコミッションを稼動させていくとか。20年、30年かけてでも、英国のForest Commissionのような、バイタリティーあふれる活動機関になっていってもらいたい。