はじまりの森の植生調査 

asahiro2006-05-21


会の会報に掲載した内容です。
右の写真をご覧下さい。タブ、ヤマザクラ、コナラの混交林において、タブを択伐したところ、ヤマザクラ保全できただけでなく、林床植物の被度が一気に高まりました。

以下、本文
安全で楽しい落葉広葉樹の保全を目的とした作業は、森の植物にどのような効果を果たしているでしょうか? という疑問がきっとあると思います。平成12年の「鴻巣山森づくりワークショップ」における「はじまりの森」の作業から6年目を向かえ、そろそろ会としても継続的なモニタリングを平行して開始すべき時だと感じています。また、調査と小難しいことを抜きにしても、汗を流す伐採作業とは別に、ゆっくりと植物をみたり、子供たちと遊ぶ時間も(子持ちの親として)大切です。
 5月14日は、はじまりの森(T-4)、堆肥ヤードの北側斜面、15×20mの調査区について、階層別の出現種および被度、高さの調査を行いました。データの整理が終わっていないため途中経過報告となりますが、全出現種数48種、階層別内訳は高木層6種(ヤマザクラタブノキ他)、亜高木層4種(ヒサカキ、イヌビワ他)、低木層7種(シロダモ他)、草本層約41種(イヌビワ、テイカカズラ他)でした。
特筆すべきことは、この40種以上出現した草本層です。2枚の写真をご覧ください。6年前は、明るい茶黄色の土が露出する場所だったため、択伐により林内を明るくし、出た材で等高線に沿って土留め工を行いました。ところが現在では、土留め工には落ち葉が堆積し、湿性土壌を好むシダが繁茂しています。林床は広くテイカカズラに被われており、落ち葉を抱きこんでいるようです。少しスコップで掘ってみると、土は黒々としていました。伐採した樹木の切り株から多くの常緑樹が萌芽する一方、埋土種子だけでなく、風散布や鳥散布と想定される実生の芽生えが多くみられました。草本層のみに出現する種数は約35種にのぼり、全出現種の73%を占めています。林内は階層構造が発達し、緑の濃い林層になりつつあります。
以上のことから、当初期待した作業は、高木層の落葉広葉樹種の保全だけでなく、林内照度の改善による林床における多様な植物種と土壌の保全に寄与できており、目的を達成していると言えるでしょう。皆様、少し時間のある時は、ノコギリの手を休め、足元の植物に気を使いながらこの一角をご覧ください。様々な森の不思議が発見できると思いますよ。