技術習得制度

asahiro2006-02-05

今日は、森林ボランティアのための技術習得制度モデル講習・審査会「手道具編」へ参加してきました。この技術習得制度については、NPO法人森づくりフォーラムの中に技術習得制度創設準備事務局が設けられており詳細は、そちらをご参照ください。

このモデル講習会は、正式な制度立上げの模擬講習として企画されたもので、福岡県八女郡黒木町の山村塾が講習の受入れを行いました。

そもそも、関東のほうで本制度の立上げが必要とされた理由は、
① 森林ボランティアの団体数の増加と共に事故が増加している。
  (グリーンボランティア保険の事故率、
   2001年:9件(0.7%)、 2002年:25件(1.7%)、
   2003年:36件(1.9%)、2004年:42件(1.9%))
   引用:森づくりフォーラム業務資料より
  (2年間の森林ボランティア団体での事故数:449人。
    内、1カ月以上の休業が必要な怪我:17人、
      3〜1ヶ月未満の休業が必要な怪我:9人
    引用:林野庁:「森林づくり活動についてのアンケート集計結果」、2004)

② 林家や地主など、森林ボランティアの受け入れ側にとって、ボランティアの技術レベルが分かるようなシステムがあるとありがたい。(第4回グリーンカレッジ(2001), 田島信太郎氏談)

③ 事故にプロ・アマの違いは無く、安全確保のためには理にかなった技術・技能の習得が必要。それが、社会の信用につながる。

④ ボランティア自身が自分の力量が分からず、客観的な物差しが欲しいというニーズもある。

というようなことが示されています。(引用:技術習得制度の検討経緯と進捗状況、2006年2月4日福岡)

特に①、なんと2%近い事故率であり、先日書いたような保険の値上げは、ここら辺を受けてのことでした。また、坂井氏は、個人の権利が大きくなり、保険の支払い費用が増加しているという点も指摘されていました。

この制度は、「森と共に暮らす社会を創る」ため、森林ボランティアが作業しやすい森林施業ガイドラインを作ることを目的にされているそうです。

この制度立上げの状況は
2003年 準備委員会
2004年 創設発起人会(講習・審査部会、組織化部会、広報部会)
2006年2月 森づくり安全技術・技能全国推進協議会(仮称)の設立総会
2007年3月までに、同地域推進協議会(仮称)の設立を関西、広島、他で予定
とのこと。この制度の運用は、地域の熱意が動かしていくとのこと。

さて、今回のモデルコースは、一泊二日、実技とビデオでの振返りを2日間という形でした。
詳細は、ふくおか森づくり日記を参照してください。
http://blog.drecom.jp/fukumori/
講師は、五反舎のお二人と森づくりフォーラムの坂井さん。

私にとって、今回の講座は、大変印象深い体験となりました。

特に、講師が強調された「ポイントは、如何に危険の少ない状態で木を伐るかという点にあり、リーダーの責任として、リスク回避と、現場管理を的確に行うかということを審査する。上手い下手は、二の次である。」という点です。

実技の流れは、まず最初に講師がデモを行いました。(写真参照)
一つ一つ、丁寧に声を出しながら安全、ノコの進み具合を確認し、パートナーに的確な指示を出し、受け口の修正をヨキで丁寧に行う姿は、凛とした空気の中で、とても、すがすがしく感じられました。

伐倒の流れについては割愛しますが、下記のポイントがとても新鮮でした。
・服装、道具類を自ら審査員に申告する。
・パートナーは、伐倒するリーダーの指示無く動いてはいけない。
・安全確認の一つとして、自分の退避場所を申告する。
・受け口切り開始前に笛を一回吹く
・ノコの方向・水平を丁寧にチェックする。
・受け口を丁寧に修正する。
・追い口を入れ終わった後、リーダーは退避場所に移動し、パートナーがロープで引き倒す。

特に、最後の伐倒時、リーダーは木を押すような事はせず、必ず株から離れるべきという点は、どちらに木が動くか分からないというリスクを考慮した、森林ボランティアが習慣付けておくべき重要なポイントと思われました。

講師のデモの後、受講者は、リーダー、パートナー、主審、副審に分かれ、全ての役を体験できるようにローテーションを回しながら、2日間かけて数回実施しました。

さて、振返りなどの中で、講師の方は私達の諸疑問点について、「みなさんは、どのようにお考えですか?」と、多くの意見を収集されました。これは、制度構築のヒアリングをかねてのことではありますが、現在のボランティアの認識について、地域性について、そして、あるべき安全管理について、論点を整理するのにとても大切なプロセスといえます。

ノコを入れる高さ、ロープのかけ方、伐倒時に木を押すことの是非、関東でも諸説紛々あったそうです。講師はこの点について、「作業効率と安全管理は常に背反する」と指摘されました。
本制度の使命を軸に考えるならば、安全管理の視点から整理するべきであるということです。

また、印象深かった話題として、
山では、3っつ重なったら死ぬ。だから
・ヘルメットをしろ
・気配がしたら後ろを見ろ
・背後からの指示にはしたがえ
と、師匠から教授されたそうです。(塚本談)
心に留めておきたい言葉でした。

さて、コースの終わりのディスカッションで、下記のような話題がありました。
・各団体で、ぜひ、日ごろ、今日のようなことを行って欲しい。
・制度がスタートした場合
  3年更新とする
  指導者はボランティアでなく、無償としない。
・保険料と本制度のリンク(割引価格設定)は保険会社と考えたい。
・下草刈り、枝打ちなどは、今後の課題。
・地域におけるコース運用の財源は、緑水と県などに働きかける。
・制度のマネージメントは、できるだけ負担のかからない方法を考える。
・広葉樹については、見ていない。

今回は、坂井さん、五反舎の方々、また、参加された多くの森林ボランティアの方々と交流でき、大変、意義深い時間でした。
次回は、2月25−26日、今度はチェーンソーを使用した機械編です。
S-GIT:みどり情報局(静岡)の石垣氏が来福されると伺っています。
九州では、またとないチャンス。ぜひ、皆様、ご参加ください。