ヤナギを用いた短期萌芽更新施業

今日は、環境・遺産デザインコースの自然・森林遺産論の科目で、下記の英国のフォレストリ・コミッションが出版している報告書の輪読を行いました。

Ian Tubby, Alan Armstrong, Establishment and Management of Short Rotaion Coppice,2002, Forestry Commission.

この報告は、ヤナギとポプラの2〜3年の萌芽更新施業による、エネルギー減として生産体系に関する内容でした。もともと、英国でヤナギは、”かご”などを作る手工芸の材料として伝統的に用いられており、水気に強く成長も旺盛なことから、河川沿いなどにも植えられています。


写真は"Bore Place"という、かつて13世紀ごろからBore家により所領されてきた土地で、現在は"Commonwok Land Trust"により、持続的な社会を目指した様々な営利・非営利活動が行われています。これは、ヤナギの切り株から伸びた徒長枝です。Green Wood Workshopを主宰するジョンは、このヤナギの材料を用い、様々なクラフトを製作されていました。
この写真は、2004年にBTCVのTree Wardenの講座の際に撮影した写真です。雑木林管理の講座は大人気のようでした。

私も、昨年、庭にヤナギを植えました。息子とヤナギで何か作れると良いな〜と考えてのことですが、薪ストーブの燃料にするのも悪くなさそうです。福岡では大濠公園の周辺にヤナギの美しい並木があります。街路樹としての利用が一般的ですが、昨今、自然河川工法の材料としても見直されており、さらには、身近なバイオマスとして、工芸材料として活用する視点も望まれると思います。

緑のコーディネイター発表会

asahiro2009-11-17


昨日は、福岡市の緑のコーディネイター養成講座の実践発表会と総括が行われました。講座は後半が実践型で行われており、実際に地域の中で花壇を探し、地主さんや地域の方々と交渉して花苗の植栽を行う活動や、散策イベント、里山での散策路づくりなど、グループで実践するという内容です。とても、ハードルの高い講座ですが、いずれも、受講生の様々な努力の甲斐あり、とても充実した発表が多くありました。「すばらしい」と思う瞬間が、たくさんありました。たとえば、
・○○薬局の植え込みを対象とし、既存のツツジを残しながら植栽をコーディネイト。来年からは薬局さんが苗代を出していただけることになったそうです。
・ある小学校にアプローチをかけ、自分達の園芸活動を学校長が総責任者に位置づけることができた。
・苗を集めるために、造園業者さんに電話を一軒一軒かけて、400のポットを集めてしまった。
コーディネイターだけど、地元の活動への参加を選択し、地域に寄り添うスタンスを大切にした。

受講生の方々は、講座とはいえ、行動的に地域や行政、業者に働きかけたことで、思わぬ、新しい出会いを多く得られたのではないでしょうか。出会った人の思いを、また、伝えていくのも大きな役割のように感じています。また、コーディネイターという役柄上、いつかは、手を引き、地元にまかせなければならない方向性も出てくるように思います。フォローのできる関係性を組織の内外に作ることが今後の鍵になるのではないでしょうか。

この講座が10年の節目を迎えたとき、チーム緑のコーディネイターのような、ミッションベースの枠組みが作れるとよいな〜と感じました。今後が楽しみです。

こだまの森シンポジウムを終えて

今日は、佐賀県の古湯温泉で有名な富士町に訪れ、表記の基調講演とパネルディスカッションを行いました。こだまの森づくりの5年の節目のイベントということもあり、とても充実した時間になったという印象を持ちました。佐賀の皆様、お世話になりました。

私は、次のような印象が強く心に残りました。

「こだま」=「木霊」と書きますが、森を大切に思う心を、どのように伝えていくのか。また、ある農林家のパネラーの方から、静かに、「恵まれた風土のもと、貴重な緑資源を国民の手で管理する時代がきたと思う。」と話された思いを、どのように継承し、実現させていくのかという点に課題を感じました。

もちろん、生業としての林業の課題があり、縦割り行政の問題、また、街の人は何をして良いのか良くわからないという問題、そして、リーダーが不在という点などの課題が挙げられます。

マチとムラを繋ぐ現場のリーダー、もしくはコーディネイト組織が必要であり、特に、看板となる市民と接する現場のリーダーが、顔の見える活動を展開することが大切であると話しました。

そのような人材を育てるには、何年もフォローを続ける必要があり、体験活動の入り口にとどまらず、経験する場、リピーターとして参加できる場、その中から、自分の仕事と山仕事を兼業する人材が出てくるかもしれません。最終的には、田舎に暮らしたり、林業につく人が得られる可能性が出てきます。佐賀の場合、5年目ということもありますが、1〜5年目のボランティア層と、20年以上の経験がある林務従事者に本日の参加者の属性が分かれました。10年、15年と継続できる人材の育成が求められています。

そのためには、よい現場を持つこと。参加するボランティアや行政、地主さんなどの声に耳を傾け、コミュニケーションをとりながら、質の高い活動現場を数多く作ることだと思われます。このようなリーダーが現場やボランティアに集中するには、専従スタッフのいる事務局が必要です。そのためにもパートナーシップ事業が求められています。

今日は、もっと話したいことがたくさんありましたが、時間の制約の中、絞って話しました。
佐賀県の森づくりは、市民と自治体、地元が顔の見える活動をされており、大変、素晴らしいと感じました。今後とも、よろしくお願いいたします。

森林と市民を結ぶ全国の集い 2009 in Tokyo

asahiro2009-11-05


昨年度、福岡で行った「森林と市民を結ぶ全国の集い」は、今年、12月の5,6日に立教大学で行われます。現在、申し込み受け付け中なので、興味なる方はぜひご参加ください。サイトはこちら

森林と市民を結ぶ全国の集い 2009 in Tokyo

私は、6日、第六分科会で、川嶋正氏のコーディネイトのもと、「組織は人を育てていますか? 〜人づくりについて考える〜」というテーマで話題に加わる予定です。

こだまの森林づくりシンポジウム2009のご案内

asahiro2009-10-27


佐賀県「こだまの森林づくり」が5年目を迎え、下記のシンポジウムが11月14日に行われます。
申込方法は下記を参考にしてください。

県民協働による森林づくりを進めるために

スギダラ

先日、ふくおか森づくりネットワーク主催で、下記のお二人の話者をお迎えし講演会を行いました。

千代田 健一さん(日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長)
佐藤 和歌子 さん(NPO法人 森林をつくろう 理事長)

私は、佐藤さんのお話を仕事の都合で聞き逃してしまいましたが、感想を聞く限り、とても、誠実な取り組みをされており、良い講演会だったようです。地元を拠点に活動をされている点、伝統木構法の学生設計コンペを実施されている点など、とても大切な取り組みと感じています。

千代田さんは、期待通り、スギを通したものづくり、まちづくりの魅力を楽しく、分かりやすくお話しいただけました。芸工の卒業生だからでしょうか、このような活動を強く教育の現場に取り入れたいと感じました。

上記の報告がふく森とスギダラ北部九州のブログに紹介されています。

ふく森スギダラ北部九州

水俣湾を訪ねて

asahiro2009-10-02

先日、3年生の合宿研修で水俣を訪ねました。下記の写真は百間排水溝。昭和7年(1932)年から昭和43(1968)年まで、チッソ(株)水俣工場において酢酸等の原料となるアセトアルデヒドの製造工程で副生されたメチル水銀化合物が工場排水とともに排出された場所です。八代海不知火海)は汚染され、一円に水俣病が発生しました。
諫早の後に、この水俣を訪ねてみると、近代化の過程で生じたことについて、考えさせられます。特に水俣の深い傷は、人々の暮らしの根幹であった食卓を通じて病と苦悩が深まっており、とても想像することは難しいと感じさせられました。

水俣湾は比較的閉鎖された八代海の奥部。水俣川が流れ込んでいます。汚染前は、諫早と同様、豊な干潟であったと想像されました。水俣病の影で、あまり注目されることはありませんが、汚染魚の詰まったドラム缶と共に埋め立てられたエリアでは、諫早同様に干潟の環境が失われたに相違ありません。

このようなことを考えると、水俣の自然と地域、企業とのもやいなおしはどのように行われるべきなのでしょうか。私は、職員の給料を減らし、年に何回かは海で漁を行い魚を取ること。棚畑でミカンや野菜を作ることなどを奨励してはどうかと思います。その活動の中で、お互いの傷は癒えていくのではないでしょうか。